講習のテーマは「対象に応じた指導」だった。そして、初めて車椅子バスケットボールを体験した。
まず障害者の障害についての説明があった。障害福祉における障害とは「身体障害」「知的障害」「精神障害」の3つの障害を意味している。指導の対象として、肢体不自由（対麻痺者）を対象に車椅子バスケットボール、四肢麻痺者を対象に車椅子ツインバスケットボール、知的障害者を対象にID（Intellectual Disability）バスケットボールがある。今回の講習では話が出なかったが、デフバスケットボール（聴覚障害者のバスケットボール）というのもある。バスケットボールというスポーツはいろいろな立場の人達をサポートしているもんだと改めて関心した。

【車椅子バスケットボール】
・競技規則は一般のバスケットボール規則がベースになる（コートの広さ、リングの高さ等は同じ）が一部異なる。
・「持ち点制」があり、障害のレベルに応じ1.0〜4.5点までがあり、プレイヤー5人のチーム合計が14.0点を越えてはならない。
・ドリブルはプッシュ（車椅子のタイヤを手で回す行為）が2回まで出来、その後のプッシュは反則となるが、ボールを一度つけばクリアされる。ダブルドリブルはない。

【車椅子ツインバスケットボール】
・より重度の障害者が対象となる。競技規則は一般のバスケットボール規則がベースになるが一部異なる。（通常より低い位置にもリングがあり、二つリングを使用する）
・持ち点は11.5点を越えてはならない。
・各プレイヤーが障害の持ち点によりヘアーバンドの色が違っており、シュートエリアや利用するゴールが異なる。

いずれもリハビリを目的として、始まったようだが、近年競技レベルが向上しているそうだ。
なお【IDバスケットボール】【デフバスケットボール】　は一般のバスケットボール規則と同じようだ。

今回の講習では車椅子バスケのチームが2チーム来て模範でゲームを見せてくれた。実は僕はこの機会を楽しみにしていた。かねてから車椅子バスケの競技は相当熱く、激しいと聞いていた。また、「スラムダンク」を書いた井上さんが最近不定期連載している「リアル」の影響もある。この競技を生で見て、実際体験してみたいと思っていた。

実際にゲームはとても攻守の切り替えが早く、ゴール下でコースを通させないように車椅子が激しくぶつかりあう。中には横転する選手もいる。フリースローシュートや3Pライン付近からシュート打つ。座ったままの姿勢でふつうに届いている。信じられない。見ていて熱くなる。「すごい」としかいいようがなかった。

その後は、いよいよ実技だ。はじめのうちはギコチなかったものの、車椅子の性能が非常に高く、なんとなく乗れるようにはなった。右、左、回転と動けるようになった後、レイアップシュートをやった。何とか入ったものの、ちょっと距離が離れるとまるで届かない。選手のみなさんは、習慣化された練習、上半身のトレーニングなどをやっているのだろう。

ゲームを見ても、実際やってみても大変楽しかった。一般のバスケットボールとは異なるバスケットボールの世界がそこにはある。そしてとても魅力的だ。実際に健常者の車椅子バスケットボールチームもあるそうだ。趣味で遊び的に盛り上がることへの危惧もあるようだ。この競技が何の目的に誰のためにあるのかを忘れてはならないと思う。ただ僕はこの種目の魅力をもっと多くの人に知ってもらいたい。講師の方は「障害者の社会差別をなくすこと」が大切なんだとおっしゃっていた。より多くの人がこの競技に興味関心を持ち、触れ合い、向合うきっかけになればと思う。表面的・外見的な歪んだ個人主義が広がっているこのご時世の中で、差別についてちょっとだけでも変わるかもしれない。地域バスケの「場」についてもヒントになるような気がする。 とにかく、この競技は大変魅力的である。海外ではプロチームもあるそうだ。是非、一度体験する（観にいく、出来れば実際やってみる）ことをおすすめする！！